タコカバウータン

えらそうなことを言っていても気が小さいです。褒められて伸びるタイプです。

ミシンと金魚 永井みみ

ミシンと金魚 (集英社文芸単行本) 作者:永井みみ 集英社 Amazon 塾の課題でした。 ミシン中毒者は新聞配達のバイクに乗って < あの女医は外国で泣いた女だ。> む?む? 永井みみ『ミシンと金魚』はいきなりカッコよく始まる。 そして、ラスト、ページをめく…

やさしい猫 中島京子

やさしい猫 作者:中島京子 中央公論新社 Amazon 塾の課題です。 だいじょうばないこの国 中島京子『やさしい猫』は、シングルマザー(ミユキさん)と在留スリランカ人男性(クマさん)の恋愛、結婚を通して、出入国在留管理庁(入管)による恣意的な外国人収…

いかれころ 三国美千子

いかれころ (新潮文庫) 作者:三国 美千子 新潮社 Amazon 塾の課題でした。 好きな小説です。 分家本家往復小説 一般に関西人の抱く河内のイメージといえば、ガラの悪い人たちがだんじり祭りをしてるとこ。三国美智子『いかれころ』はそんな河内のレッテルを…

献灯使 多和田葉子

献灯使 (講談社文庫) 作者:多和田 葉子 講談社 Amazon 塾の課題です。 献灯使、検討ののち拳闘し、見当違いに健闘し 多和田葉子「献灯使」は、言語変換 / 言葉狩りディストピア小説とも言えるかもしれない。 ざっくり近未来。100歳を越えた義郎と曾孫の無名…

園芸家12カ月 カレル・チャペック

園芸家12カ月 (中公文庫) 作者:カレル チャペック 中央公論新社 Amazon 塾の課題です。 自分でもちょっと好きです。 園芸家はミミズの夢をみる 以前住んでいた借家には畳十畳分くらいの、私基準ではけっこう広い庭がつていた。都会育ちで庭というものにほと…

御社のチャラ男 全世界、全人類に片思い

御社のチャラ男 作者:絲山秋子 講談社 Amazon 塾の課題でした。 全世界、全人類に片思い 絲山秋子『御社のチャラ男』はロンド形式で一人称の語り手が次々に入れ替わり、舞台となるジョルジュ食品の社員の面々のキャラクターが多角的に描き出されていく。たと…

金子文子 『何が私をこうさせたか』

何が私をこうさせたか――獄中手記 (岩波文庫) 作者:金子 文子 岩波書店 Amazon 塾の課題でした。 金子文子に祝福を! かつて大映ドラマってやつがテレビの連続ドラマ界の一翼を担っていた。ドロドロのメロドラマで、極悪非道の輩が主人公の薄幸の美少女をこれ…

同志少女よ、敵を撃て

同志少女よ、敵を撃て 作者:逢坂 冬馬 早川書房 Amazon 塾の課題です。 イリーナは女の顔をしていない、つか、なんなら人間の顔もしていない。 イリーナ。第二次世界大戦中のソ連軍女性狙撃兵の「活躍」を描く逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』において、準…

戦争は女の顔をしていない

戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫) 作者:スヴェトラーナ アレクシエーヴィチ 岩波書店 Amazon 塾の課題でした。 というか、前回の課題『同志少女よ、敵を撃て』を受けて、わたしが課題にしてほしいと先生に頼んだのでした。 世界のどこかにあたしたち…

「三島由紀夫」とはなにものだったのか

「三島由紀夫」とはなにものだったのか(新潮文庫) 作者:橋本治 新潮社 Amazon 紙は人間よりも辛抱づよい、みたいにことをアンネ・フランクが日記の冒頭に書いていた気がする。調べてみたら、書いてますね。 ずいぶん久しぶりのブログだけれども、そして、…

コロナ時間

コロナ時間の課題図書 緊急事態宣言が出て、ついにすべての仕事がなくなり、収入もなくなり、目の前に真っ白な1カ月間が広がった。いやはや。 お金がないのはたいへん困るけれども、まあジタバタしてもどうにもならない。仕事の再開を待つしかない。国の給…

日常に侵入する自己啓発

塾の課題で選んだ本です。 向上心の行方 前回の講座で『日常に侵入する自己啓発』(牧野智和 勁草書房)が紹介されたとき、サブタイトルの〝生き方・手帳術・片づけ〟にドキッとした。自己啓発本なんて自分とは無縁のくだらないものとして眼中になかったのが…

野火 again

塾の課題です。 とりあえず、神で間に合わせておく 大岡昇平『野火』を最初に読んだときは、兵士失格病人未満と分類された主人公が、軍隊という激烈な抑圧装置からはじき出された、その絶望的状況の中での開放感が印象的だった。しかし、今回再読してみると…

極夜行 角幡唯介

ノンフィクションについて書くという塾の課題です。 『極夜行』角幡唯介 食べること 食べられること 『極夜行』は探検家、角幡唯介が、太陽の昇らない冬の北極の闇の中を、一頭の犬とともに歩き続ける旅の記録だ。四カ月もの極寒暗黒の旅は人間の精神になに…

OUTSIDER IN THE WHITE HOUSE  バーニー・サンダース自伝

塾の課題です。英語で読んだら提出ビリになってしまいました ( ̄ー ̄; バーニーに会いたい! やあ、素直な感動に包まれる読書でした。ごっつあんです。バーニーが好きだぁぁぁぁぁぁぁあ♡ 昨年来、基本英語の本は英語で読もう(ハハハ、時間かかる)方針を…

世界の果てのこどもたち

先月の塾の課題です。 言葉と戦争 たとえば登場人物のしぐさひとつで、すっとキャラクターが立ち上がるような、そんな小説があるけれど、中脇初枝『世界の果てのこどもたち』(2015年 講談社)は違う。なんというかもっと、よく言えば親切、悪く言えば説明的…

トルーマン・カポーティ年

写真探してて見っけ。この本も読みたいなあ。 去年の12月の塾の課題です。お題は「今年の1冊」 ひょんなことから人生でいちばん忙しい年末年始を送ることになり ブログもなかなか追っつかないのでありました。 トルーマン・カポーティ年 去年の秋に天涯孤独…

朝鮮と日本に生きる

塾の課題でござる。 おお、金時鐘、来た〜、だったのだけれど……。 以下 ↓ 提出したものです。 油膜 大学時代に朝日選書の鼎談本『差別 その根源を問う』(上・下)を読んで(今も絶対にうちのどこかにあるはずなのに発見できず)、安岡章太郎の飄々としたホ…

ジニのパズル

塾の課題です。 提出したものは ↓ 単一民族国家 私が大阪市立すみれ小学校4年生のときだったと思う。昼休みに教室の先生の机の上に〝外国人〟と書いた紙が置いてあるのが目にとまった。外国人? そこにはクラスメート数人の名前と、それぞれの〝本名〟が書…

コンビニ 人間

今回の塾の課題は芥川賞取りたてほやほやの『コンビニ人間』 提出したものは↓ 鼓膜人間 古倉恵子36歳独身コンビニアルバイト歴18年。村田沙耶香『コンビニ人間』の主人公にとっては、毎日がサバイバルだ。彼女は地球に落ちてきた異星人さながら、常に〝正常…

ハリウッドで初めてゲイであることを隠さなかったスター

日本ではあまり読んだ人がいないかなと思うのでご紹介します。 サイレント時代からトーキー初期のスター、ウィリアム・ヘインズの伝記です。 タイトルの wisecracker はなんだろな、ぴしゃりとうまいこという人って感じでしょうか。公私ともにウィットに富ん…

夏の花 原民喜

塾の課題です。 ちょうど8月15日近辺に読んでいて、民喜が民忌、な心持ちでした。 提出したものは↓ 羊羹をおくれ <私は自分が全裸体でいることを気付いた> 原爆文学の嚆矢とされる原民喜「夏の花」。パンツ一つで厠にいた語り手は、おそらく脱糞中だ。〝災…

憲法本

もちもち塾の課題です。 日本国憲法を一度読んでみるのはオススメです。 わたしゃ読んでるんだぜ、って気分になれます。 当たり前だけど。 提出したものは↓ 理想ですけど、なにか? 今回課題の憲法本、原則1冊を選んでということでしたが、1冊じゃ誰かさんの…

二十四の瞳

もちろん塾の課題です。 壺井栄を舐めてはイカンです。 提出したものは↓ 24eyes 小さな村の小学生は、五年生になると片道五キロの本村の小学校へ通う。< てづくりのわらぞうりは一日できれた。それがみんなはじまんであった。まい朝、あたらしいぞうりをおろ…

断片的なものの社会学

インタビュー入門講座の課題が今回は書評でした。テーマは「声を聞くこと」。 提出したものは↓ 無意味と物語と暴力 < お父さん、犬が死んでるよ。> という声から、岸政彦『断片的なものの社会学』(朝日出版社)は始まる。聞き取り調査の途中で、この声はぽ…

これからのマルクス経済学入門

もち塾の課題です。 提出したものは ↓ マルクス経済学はつらいよ 苦悶読書。松尾匡・橋本貴彦著『これからのマルクス経済学』。それでもなんとか読み終えて、いかんこれではマルクス嫌いになっちゃう、とうちにあった内田樹・石川康宏著『若者よ、マルクスを…

A Beautiful Child

きのうの深夜3時頃、ついに “Capote” を読み終わった。 すぐには眠れない。つい今しがたカポーティを亡くしたような気分。 晩年はすさまじかったし、いちばん近しい人を喪って1年もたたない私には いろんなフラッシュバックもあった。 何か読まないと眠れ…

忘れられた日本人

塾の課題で初めて宮本常一を読みましたとさ。 歌とエロ 編集者向けの「使ってはいけない用語集」、〝百姓〟の次が〝水呑百姓〟で、普通気づくわと笑ってしまったことがある。今やほぼ差別用語&死語と化した〝百姓〟を愛情と敬意を持って連発するのが、宮本常…

馬たちよ、それでも光は無垢で

塾の課題です。お題は 3.11 本。バタバタのうちに時間がなくなり、近所の古本屋めぐりでなんか見つかるべーと思ったら、簡単に見つかったけど、えれー目に遭いました。 提出したものは↓ 小説の必然、必然の小説 古川日出男『馬たちよ、それでも光は無垢で』…

『極北のナヌーク』+角幡唯介トーク

狩をするナヌークさん。普段はニコニコ、気のいい感じの方です。 昨日に引き続き、本日も「[座・高円寺]ドキュメンタリー フェスティバル」です。 開場前、すぐそばでジャン・ユンカーマン監督が主催者の方と話してらっしゃいました。流暢な日本語で、めちゃ…