公開時、期待満々で映画館で見た。
すごい映画だったけど、ショーン・ペンは例のごとく炸裂していたけど
あまりにむごい話で救いがなく暗澹たる気持ち。
私は子どもがむごいめに遭うのはいやなのだ。
その後、旅行で飛行機に乗ったときに
機内上映リストにこの映画があって
せっかく楽しい旅へ行く前にこんな映画見ちゃうって最悪じゃん
どういうセレクトしてんだよと
知らずに見てしまう人が気の毒だった。
帰りもやってて、帰りでもイヤだろ、楽しい思い出台無しじゃん
と、またまた選んでしまう人に同情した。
で、今回、仕事で見なくてはならなくて
正直、気が重かった。
それだけ力のある作品なのだ。
人を暗い穴の中に引きずり込むような傑作。
大昔からケヴィン・ベーコンの鼻が大好き。
すーっと伸びてきて最後にくっ、と上がる。
ところが意外! 今回は楽しめた!?
もうストーリー展開も結末も全部わかっていて
覚悟できまくりなので
堪能できるの、この映画を。
で、まあ、ショーン・ペンはすごいわけです。
私はショーン・ペンが泣くところは全部つられて泣いた。
先代の片岡仁左衛門をちゃんと見たのは最晩年だけ
(子どもの頃に見ているかもしれないけど覚えていない)
だけれど、ほんとうにすごかった。
世話物ではせりふが軽くて、まるで普通の大阪のおじいちゃんがしゃべっているみたい。歌舞伎じゃないみたい。
その仁左衛門が泣くときに
ああ、歌舞伎の泣きの型というのは様式ではなく心理描写なんだと思った。
気持ちが高まって、たまらず声が漏れる
と、その漏れた声につられてさらに気持ちが高まり
相互作用でエスカレートしていって
ついに泣き崩れる。
仁左衛門の泣きは完璧にその情動を見せてくれた。
ショーン・ペンが泣くのを見て、そのときの仁左衛門を思い出したよ。
メイキングでショーン・ペンの妻役の女優さんが
ショーンほど入念な準備をしてくる俳優はいない
彼は細胞のレベルから役になり切っている
と語っていた。
DNAも組み替えてるな、ショーン・ペン。
彼だけでなくティム・ロビンズもケヴィン・ベーコンもすごい。
ショーンとティムの妻役の女優さんも。
いやあ、不思議なもんです。
だから、『ミスティック・リバー』を見て
傑作だけどもう二度と見たくないと思っている、きのうの私のような方
2回目も、確かにつらいし、切ないけど
このめくるめく演技力の鮨詰め状態を
フルコースじっくり噛み噛み味わえます。
なんならまた見てもいいと思っているもの、私。