タコカバウータン

えらそうなことを言っていても気が小さいです。褒められて伸びるタイプです。

ドルジェル伯の舞踏会

ドルジェル伯の舞踏会 (岩波文庫)

 塾の課題です。でないと突然こんなもん読みませんよね。ちなみに普通に本屋に行って買うと

ドルジェル伯の舞踏会 (新潮文庫)

こちらになりますが、岩波の鈴木力衛さん訳のほうがいいと

読み比べれば国民の97.8%が感じることでございましょう。(ヒロキの憶測)

鈴木さんのほうが先に訳しているのにな。

提出したものは↓

 

ドルジェル伯の舞踏会には行きとうない

 

 チャラい貴族アンヌ・ドルジェルは、ちょっとぼんやりした若い貴族フランソワを気に入って一緒に遊んでおりました。ところが、アンヌの植民地出身ほんわか素朴妻マオとぼんやりフランソワが、お互い自然が好きねで心通じ合って、ほの字に。したたか度ゼロのマオは大慌て。暴走してこともあろうにフランソワのママに告白手紙。長年未亡人しかやってこなかったフランソワ・ママにまともな対応ができるわけもなく、なんだか熱くなっちゃって、挙句まんま息子に伝えて火に油。息子はやった、ラッキー! マオもえっ彼も私のこと……ポッ。でも、いけないわ、これは許されない恋よ、えーい、もう夫にもぶっちゃけー。ぶっちゃけられたアンヌは、げげ、相手のママに手紙? 世間体取り繕わなきゃとうろたえつつ、とりあえず妻には「眠れー眠れー」作者からおまえは催眠術師かと突っ込まれて終わるというトンデモ小説が、世に名高いレーモン・ラディゲ『ドルジェル伯の舞踏会』なのでした。いやはや。

 <チェス(どう考えても〝将棋〟じゃないよな)の駒の象牙のぶつかり合う乾いた音が感じられるbyチボーデ>——岩波文庫版解説(注1)——と登場人物たちの心理の交錯を絶賛され、小説そのものよりこの絶賛批評が高評価を決定づけてしまった匂いがプンプンですけれど、これ、そんなたいした心理でしょうか。〝純潔な魂が無意識のうちに弄する策略というものは、悪徳がめぐらす計画よりももっと奇妙なものである〟(岩波文庫 鈴木力衛訳)うむ、確かに奇妙、ていうか幼稚じゃない?

 それもそのはず、ここは子供の国。この小説世界こそがドルジェル伯の舞踏会で、そこには真の意味での大人はおらず、生活のための仕事などなく、ただひたすら着飾って遊ぶだけ。その舞踏会のペラペラ王者がムッシュ表層思考宣言(注2)アンヌなのです。没落ロシア貴族が悲しい目で見つめています。

 さて、大ぶっちゃけをやらかしたマオさんの今後は?

 

1.ほな、おっしゃる通りずっと眠っとくわ、と睡眠薬自殺。

2.アカン、この夫はやっぱりアホやと気づいて、あら、私としたことが一時の気の迷い〜とぶっちゃけをとりあえずなかったことにし、裏でフランソワと不倫三昧。フランソワに飽きたのちも次々と愛人遍歴。奔放な伯爵夫人ライフを送る。

3.いえいえ、純粋なふたりはそんな汚れたことはいたしません。手に手を取って島へ駆け落ち、大暴走。フランス社交界に一大スキャンダルを巻き起こすのです。アンヌの茫然自失の間抜けヅラが楽しみですね。

 1.新潮文庫版解説では訳者の生島遼一氏がこの有名な評を、あたかもご自身の感想であるかのように平然とパクっています。どうかと思います。

2.蓮實重彦著『表層批評宣言』をもじってみたけど、あんまり関係ないです。

 

 今回は先生からばっちばっち教育的指導を受けまして、こういう全否定ばっかやっててもダメ、もう一段レベルの高い、褒め殺しの技を身につけるのじゃ、という指令が。

 そして、次回の課題が有島武郎『或る女』。今時誰も読んでないよな〜有島武郎の堂々の600ページ越え作品を褒め殺せるのか、ヒロキ!? ピンチだ、ヒロキ!