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タコカバウータン

えらそうなことを言っていても気が小さいです。褒められて伸びるタイプです。

インタビュー 職業の肖像 予備校講師

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バリ島 チャンディダサ プリパンダンにて

 

いつもの批評塾ではなくインタビュー塾の課題です。

課題のできはさておき、私にとって掛け替えのないインタビューとなりました。

 

インタビュー 職業の肖像 予備校講師

板坂智夫 『わかるってなんだ』

インタビュアー 廣木明子

 

 大学一年生のときにバイトで塾講師を始めて以来、板坂智夫さん(56歳)はいくつもの予備校で数学、物理、古文の講師を務めてきた。現在は病気療養のため休職中。

 

なぜずっとこの仕事を続けてきたか?

 

ほかにできることがなかったのがひとつ サラリーマンとかってなれそうもない感じしたし

あと元々教えるのは好きなんだよね っていうか 話してると説明口調になるタイプなんだもん、私って

 

# ずっと教えてきたからそうなったのかも

 

いや前からだと思う あと あいだをつなぐみたいなこと 中学のときから仲良かった友だちが何人かいるんだけど 文系の子もいれば、今物理の教授やってる子もいて 文系の子とその物理の子って話が合わないんだよね そのあいだをつなぐっていうのは やってた感じがする 得意だったね あと、知ってることはとにかく言いたくなる

 

# アハハハ 知ってることは言いたくなる性格

 

そういうよなところがある だから教えるのは 好きだったのと 実は 数学はできたことはないんだ 一度も だから 数学ができる人とはわかり方 たぶん違う部分があるのかもしれないってずっと思ってた だから説明ができる んで やってたんだと思うな 

 

いちばんおもしろかった時期

 

最近だよね あと古文を勉強し始めた頃はおもしろかったけどね

古文やり始めたときは 全然昔できなかったことなんだけど 自分なりにああこういう理屈で行けば 説明ができるっていうのが見えてきたんで 古典文法をきちんと説明をしていく方法を 見つけていくのがおもしろかったかな

最近おもしろいっていうのは これをやればいいっていう 全体像が前よりもっとはっきりしてきたから 今は自分で作ったテキストで教えてるんで まあ前もテキスト作ってるんだけどね 何回も 今、数学も物理も完成してきてるんで 

 

# そのこれをやればいいっていうのは これをやれば受かるっていうんじゃなくて

 

問題があって 答えが出せれば 、丸がつけばいいというのではなく なぜそうなるかを考えられるようにしなきゃいけないっていう つまづくとこは人によって違うんだけど これができるようになれば大丈夫だっていうのを並べていくことができるんで それ順番にやってけば できるようにはなるはず そういうのが見えてきてる

 

教える仕事の醍醐味

 

あのね 全然わかってない生徒がぱっとわかるとき 

それはマン・ツー・マンで教えてたほうがわかりやすいけど 集団授業でやってても 教えてる相手ってふたりか3人だから たとえば教室に20人いて20人全員に向けては教えらんないから

で わかる瞬間って確実にあるんだよ そこだよなと思う それがないと教えた意味ないじゃん なんで

別に 合格なんてついてくるからさ たとえばね 何かの式があって これをこういうふうに解釈するんですよ こうすれば次にこれ使えますよねって流したってわかんないのよ なんでそれが新しいのかをわかるためには 同じようなことを何回も何回も繰り返してみるとか そういうふうなことやらないと 呑み込めなかったりするんだけど 人によって違う その呑み込むポイントをどう見つけていくかっていうのをやんないと わかるようになんないのね わかんない子は  

 

# 泳ぎを教えるときに この人にはこの表現がわかりやすいけど この人にはこっちで伝わるのか みたいなのとちょっと似てる?

 

似てる似てる 何にも言わなくても式見てるだけでわかる子もいるんだもん

 

# うまい人の泳ぎを見てそのまま真似できる人もいるしね

 

個別指導と集団指導

 

難しい問題だよね 基本的に誰かがわかるわからないっていうのは 同じようにやっても同じようにはわからないわけだから 教わるほうにとってみたら あくまで個別の出来事なんだよね

だから集団授業やってても 生徒ひとりひとり わかんないところも違ってるだろうし わかるわからないっていうのが発生するときには 個別の出来事であるはずなんだ 今個別指導がウケてんのは だったらひとりで教えちゃえばいいんだろみたいなことで 

でも僕は基本授業は授業でやるべきだと思ってて 集団授業のほうがいいなーと 個別的ではあったとしても その個別的なものが同時多発的に起こるわけよ 教室の中って

いろんなとこで いろんなことが起こるから 授業やってると 偶発的に こっちと同期してこっちの人がわかっちゃうとかさ だから本当は集団授業のほうがいいと思うんだ

何かを説明したときに この子はここの部分がわかった この子はここの部分がわかった すると人を見てて おれのわかってないことがわかってるな がわかるわけじゃん あてられたら全然違うこと言ったりとか

 

# 英語もマン・ツー・マンじゃなくて ある程度の人数でやって他の生徒の間違いからも学ぶ そういうのがいちばんいいっていうのとも似てるね

 

そうだよ で 今の個別指導ってただの商売だからね ああやってれば面倒見がよく見えるからってところ だから ノートが取れない子が増えてるよね 

 

# 個別だと必要ないもんね

 

集団授業でもノート取れない 黒板に書いてあることしか書けない

だから全部書くもん 説明とか 板書せずに口で説明してればいいところを書く ここポイントだよーとかって言って 

何年か前だけど 東大の理3(医学部)受ける子がいて 授業で彼だけ聞いてる話が違うんだよ 僕が授業してて

 

# あー ほかの子がノート取ってないとこ

 

言ってるんだけどね 全部ね で そういうふうに なんか取ってくる力みたいのって必要じゃない だから 面倒見がいいって あんまりいいことではないような気がするんだよね

果てしなく手抜けるしね 個別指導って 予習しなくてすむもん 長年やってればだけど

じゃあ今日はこのへんやってみましょうって 同時に解き始めて ああこのへんで間違いそうだなっていうのがわかるから 待ってて間違えたらそこ指摘すればいいし

 

# でも、たぶんこれからどんどん個別に

 

ばっかりになっていくんだろうなと思うんだけど また学力落ちると思うよね ずーっと学力落ち続けてるもん 実感としてそれはある

 

# でも、進学したら 当たり前だけど 大学の授業ってマン・ツー・マンではないわけで 困るよね

 

うん だからまたそこで鍛え直さなきゃいけないわけ 

 

理系式古文

古文を始めたのは数学に飽きたからなんだけど それと生徒全体の学力が低下している中で 底上げはまず 国語がちゃんとできなきゃダメだと 自分が思いついた理解の仕方を ほかにそんなふうに説明する先生がいなかったので こういうふうに教えてあげればいいと思ったのもある

まあ、あと いろんなことできると 仕事の幅が広がるから

 

# 多角経営っていうか? 理系の先生じゃ珍しいもんね 古文はどうやって習得したんですか?

 

文法のプリントの手伝いで 問題集を抜き書きして 説明するのにいいのを探すってところから始めて そしたら 古典文法の基本をまとめてる問題集って いいのが 当時はなかったから そういうの作っちゃえば センター試験レベルくらいの理解はできるだろうなって 

教えるにあたっては とにかく読みましたね 原典を 伊勢物語は読んだし 源氏物語はとにかく二回ぐらい読んだけど わからんわー

あとは飛び飛びかな 完全に読み通したのは……まあ短いのは読んでるよ 当然 方丈記とか徒然草とか あ 徒然草あんま短くないか 枕草子も一応読んでるな 長いけど

活用でメインになるのは四段活用と あとは下二段と上二段なんだけど 活用させて線引くと 左右対称でしょ 音の動きが上下で ただそれだけの話じゃん ほんとに 上二と下二なんだよね で それを二段にしなかったやつが一段活用で 変格活用ってどこかがイレギュラーになってるだけなんで 

ただ活用覚える前に まずその 未然形ってなんなのか そっちのが先だから 未然形って助動詞くっつけるための活用だったりするとかさ そういうのから始まって 助動詞がなんなのかとか ある程度まで説明して行くことができるから 

高校生レベルの説明はうまいんだよ、私 数学とか物理もそこなんだよね きっと

 

君に教えたいことがある

 

# 前に教室のポスター用に 君に教えたいことがある っていうコピーを書いたけど いちばん教えたいことは?

 

勉強っておもしろいよってことだと思うんだけど

レベルによって違ってるし そりゃ厳しいこともいっぱいある けど 本読んだりとかさ 問題解いたりとかさ そういうのって それによって 人って世界が広がるわけじゃない 

 

# じゃあ もしも生まれ変わってももう一回先生になりたい?

 

わっからんなあ たまたまだからね ただ 学校って好きだったんだと思うんだよ うん だから あのシステムに関係しているのは すごい好きなんだろうなあ だから 結局なってたりするんだろうなあ

バリバリ商売したい とか思ったことないもんな

 

# 予備校の先生という職業について思うことってありますか?

 

ほんとに一時的な手助けなんだよね 予備校の先生って ただ どうも 特にここ最近それ感じてるんだけど 勉強の仕方を知らない子が多過ぎるよね

考えるってことをしないというか 学校の中間、期末レベルだったら そんなもん 意味とか全然考えなくても覚えちゃえば答え出せるんだよ だけどそれやってたら大学入試は厳しいし 入ってからも勉強できない だからほんとはそれ 中学ぐらいでシフトするんだよ 昔だったら

あとはいろんなところで機能しなくなってると思うんだよ 教育機関とかも 予備校はちょっとだけそのへんの手助けみたいな 

受験のテクニックだけ教えてるわけではないと思うんだ そりゃそれもやるよ 営業科目に入ってるんだから なんだけど 勉強するのにこういうことをできなきゃいけないっていうのをちゃんと わかってもらわないと どうにもなんないから 

公式覚えることなんて 勉強でもなんでもないわけだからさ こういう考え方をすればこの問題は解けたんだっていう 解けた経験を積み上げていく 経験を積み上げていくってことが必要なんだよね 覚えるってやり方には 積み上げるってないのよ 

時間かけて大きくなっていく 修正しながらね いろんなものを 

そういうことをするっていうのが当たり前だったんだけど それが当たり前じゃなくなってるみたいなんだよね

 

9月21日17時 板坂智夫君は亡くなりました。

秋の木の葉が力尽きてはらりと落ちるような静かな死でした。

 

予備校のHPより

座右の銘

反証可能性が「科学」と「非科学」を区別する

 

受験生へのメッセージ

解法を自分の思考回路の一部とするために、「考える」を諦めてはいけない。どのように「考える」かは教えられるから。

 

 

8/31の日記より

痩せた身体を楽しむ

蝉鳴いて浮き出た骨をなぞりをり

 

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