板坂智夫君が亡くなって1週間と1日。追悼でひとり、はつねにワンタン麺を食べにいく。板坂君がFBに最後に書き込んだのが、はつねのワンタン麺のことだったから。
西荻「はつね」のワンタン麺について思い出したことがあるので書く。
ワンタンは肉しろエビにしろその餡のみっしりしたおいしさを楽しむタイプのものもあるが、「はつね」のワンタン麺のワンタンについては、その極北、未使用の割り箸の太い方でひと掬いしただけの少量の餡をワンタンの皮で包んだものとなっていて、餡より皮がメイン、スープの中に広がった羽衣のような皮の食感がおいしい。
出来上がったワンタン麺をカウンター越しに受け取ったら、まずは麺を食べる。もちろん、いきなりワンタンを食してもまずくはないのだが、ラーメンとして3〜4口麺を楽しむ。
おそらく、「はつね」のスープは、チャーシュー(煮豚)を作った時の醤油が味ダレのベースで、また煮る前に豚肉を整形したときの切り取られた部分をゆっくり水から煮込んでスープにするのだと思う。
昨今よく見かけるような味を足し算していくのではなく、削ぎ落していって必要最低限のうまみからつくられた鮮烈なスープを楽しみたい。
その後、レンゲでワンタンを一口。皮にスープがしみこんで、羽衣のようなワンタンとスープの一体感がうまい。
ここで、はじめて胡椒を入れる。胡椒を入れるとスープの味が変わるから。まずはストレートで楽しんで、後半は少しスパイシーに。
あらためて、スープの中にふわっと浮かぶ「はつね」のワンタンは不可算名詞でいいような気がする。
食べたい。
この通り食べようと思っていたのに、記憶頼みだから、ワンタンを食べる前にすでに胡椒を入れてしまった。ゴメン。私は最後に必ずお酢も入れる。湯麺でも醤油味系でも。締めの酸っぱいスープが大好きだ。故人はどうであったか。入れてなかった気もする。ずいぶん自由な追悼になってしまった。
事情もあって、板坂君は10年近くはつねに行っていなかった。私はランチ外食の80%がはつねで、そのうち80%が焼豚湯麺で、19%がワンタン麺。なんだか追悼になっていない気もしてきたけど、許してちゃぶだい。
その後、駅前の区民事務所で葬儀費の請求手続き。国民健康保険加入者が亡くなると、葬儀費というものが支給されるので手続きするようにと区役所の人に言われたのだ。ところが、シルバーウィークのせいで事務処理が滞っていて、通知がまだ届いていないので今日は手続きできないと言われる。山のように書類がたまっているのだと。死者大渋滞。なんだか早く来すぎた私はがっついているみたいじゃないか。でも、二週間以内に手続きしないとダメと書いてあった気が。二年以内の間違いだった……。
西友を抜けて、きのう開店の古本屋さん、忘日舎へ。
私は実はあまり古本屋さんへは行かない。
理由その1
行くと必ず買ってしまう。これ以上本を増やしてどうする!
理由その2
疲れる。古本屋さんってたいてい本がぎゅうぎゅう詰めで、しかも、これぞってお店は新刊本屋と違って、そのぎゅうぎゅうの大半が私にとって興味津々本だったりもするので、目が皿になってくたくたになる。
忘日舎は本が少なくてすっきりとしていて
それでいておっ、と思う本はちゃんとあって
町に本屋さんが増えるのはうれしいし
開店のお祝いだ と3冊購入
故人は本も大好きだったから、これも追悼ということにしておこう。
一緒に行きたかったね。