タコカバウータン

えらそうなことを言っていても気が小さいです。褒められて伸びるタイプです。

大冒険ひとり千鳥

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西荻に千鳥というシブい縄暖簾の飲み屋がある。

夕方5時くらいにあいて、10時くらいには閉まる。

コの字型の大きなカウンターと小上がりが3席ほど。

店は明るく清潔で、数人の従業員がテキパキ働いている。

客層は主に爺さん。

 

2、3日前にテレビで西加奈子を見て(めちゃ可愛い人だった)

そうやん、私かて心の声でも大阪弁のほうが元気やん

なんでずっと大阪弁使うてなかったんやろ、と思い

家でずっとバリバリ大阪弁で喋っていた相手が

そんな私につられて独自のヘンテコな大阪弁もどきを喋っていた人が

(おもしろいからそっとしておいた)

死んでこの世から消えてしまったからやん、と気づく。

ピーピー泣く。

なんとなく西加奈子に救いを求めてネット検索。

又吉さんが帯に〝絶望するな。僕達には西加奈子がいる。〟と書いているので

『炎上する君』を猛烈に読みたくなる。

 

今日の夕方、夕ご飯の買い物がてら颯爽堂に行ってみた。

『炎上する君』あった!

この世でただひとりの家族を亡くした身には

日が沈んで暗くなるのが辛い。

そのうえ最近は寒くなってくる。

なんちゅうこっちゃ、ますます辛い。

食いしん坊の飲兵衛がふたりで暮らしていたから

夕ご飯は日々プチ宴会のようなもので

それがひとりになるとなんとも味気ない。辛い。

なんかおでんが食べたいなあ。

そこで、せっかく買った本など読みたいなあ。

爺さんだらけの千鳥に初単独行を試みようと思う。

友人T 田はツワモノで、何度も女ひとり千鳥を決行しているが

見知らぬ爺さんから「あちらの女性に熱燗」などと振舞われたこともあるらしい。

ちなみに私は超頑固親父の激美味居酒屋でバイトをしていた過去があり

〝熱燗〟というのは生涯の禁句だ。

「酒が可哀想です!」と眉を吊り上げる、頑固親父の顔が今も眼に浮かぶ。

 

千鳥は駅前。千鳥は近い。

テレビドラマやコントみたいに、勇気がなくて一度前を通り過ぎたけど

今日は冒険の日なのだ、ええい、と入店。

案の定、数名の客は全員男性。平均年齢は65くらい?

新参者には居心地のいい手前角席ゲット。ほっ。

ただ、おでんの鍋の中味が見えにくいのが難。

クラッシック・ラガー中瓶を頼み

おでんはいま大根はやっていないと言われて

蒟蒻、げそ入り薩摩揚げ、はんぺんを注文。

すぐ出てくるし、いいわー。

長居をする客はあまりいない。

たいていは一杯飲んでさっと引き揚げていく。

煙草をすう人がいるのが鬱陶しいけど

この店に禁煙は似合わないなとも思う。

爺さんたちのおしゃべりがBGM。

中瓶一本でおでん3品をたいらげて

『炎上する君』の最初の短編、「太陽の上」を読み終えた。

滞空時間30分ほど。1480円也。ファミレスより安いな。

 

外に出るとスキンヘッドに黒々と髭を生やした人が柳小路のほうへ曲がっていく。

路地の入り口で煙草を指にはさんだおっちゃんが立ち止まり

アート紙の立派な写真集をめくっている。

なんでそんなとこで、しかもおっちゃんと本がまったく合ってない。

西荻はおもしろいなあ。

私はこれからも西荻に住んでいられるのかなあ。

 

今度は朝5時くらいからバリバリ仕事して

夕方に切り上げて、まずは千鳥でおでんとビールとポテサラ

それからイケちゃん

——これは私が勝手につけた仇名で、ほんとは Condrieu

もとホテルオークラの幕張かどこかの総料理長をなさっていた方がやっているので

めちゃ料理がおいしくて、ワインバーなのに来たお客はみんなガシガシ料理を頼む——

でおいしいおつまみでワイン2杯くらい飲んで帰りたい。

 

ってなんでそんな優雅やねん、私。