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タコカバウータン

えらそうなことを言っていても気が小さいです。褒められて伸びるタイプです。

円卓

円卓 (文春文庫)

塾の課題です。

 今回のお題は「戦後70年に読みたい本」

まったく別の本を考えていたのですが読む時間がなくなり

最近読んでおもしろかった本書に。

何を読んでもまあ「戦後70年」にはなんとなくつなげられるだろうとたかをくくっていたら、そう甘くはなかったす。

というか、そもそも『円卓』は密度が高く、伏線もしっかりしているので、

切り出し方が難しかったなあ。小学生魂を呼び覚ます魅力的な小説ですが、「戦後70年」用の切り出しとなりました。

 

 

生まれたら、死ぬために、生きてゆく

 

 西加奈子『円卓』(文春文庫)の主人公こっこは小学3年生。「孤独」にあこがれ凡人を嫌悪している。幼馴染の吃音男子ぽっさん、両親がボートピープルベトナム人ゴックん、在日韓国人の朴君などなど、クラスは多様性の坩堝だ。三つ子の姉に両親、祖父母と狭い団地に三世代同居、円卓(潰れた中華料理屋からもらった)を中心に貧しくても幸せ大家族という、ベタな構図にうんざりのこっこには、ぽっさんの吃音も、ゴックんの出自も、朴君の在日(〝三世って王様みたいやんか!〟)も、きらきら輝いて、めっちゃ格好ええやん!となる。云十年前、同じ大阪で小学生だった私は、昼休み、担任の机の上に〝外国人一覧〟という数名のクラスメートの日本名と本名が記された紙を見つけた。彼、彼女たちが〝外国人〟ということにも驚いたが、何かいけないことを知ったようで後味が悪く、そんなものを出しておく教師の鈍感あるいは作為が不快だった。とてもこっこのように、ふたつ名前があって格好ええ!とは思えなかった。

 物語の後半、夏休みに盟友ぽっさんが帰省中、ひとり遊ぶこっこの前に、奇妙な男が「はろー。」と現れる。〝暑いさなか、長袖鼠色のつなぎを着、肩ほどまでの脂ぎった髪を、真ん中でぴたりと分けた人物〟。つなぎの胸にはSという黄色い文字のアップリケ。くねくね身をくねらせ、「胸のSを見てはるのん。」「Sは逆さにしてもSなの、知ってはるのん。」と不可解な問いかけを繰り返しつつ、妖怪鼠人間みたいな男はついには「ご尊顔を踏んでくれはるのん。」と何度もしつこくこっこに迫る。その勢いに気圧され、横たわった鼠人間の顔を恐る恐る踏むこっこに、「もーっとやでー。」「さーらーにーやでー。」「なーおーさーらーやでー。」と男はたたみかけ、その顔は血まみれになる。すこぶる奇怪な〝へんしつしゃ〟体験だ。

 こっこが家に帰ると祖母の誕生会。ほのぼの幸福一家の〝いつもより賑やかで、福々しい円卓〟だ。夕食後〝テレビからは、65年前の今日、に始まるナレーション、むじょうけんこうふく、ぎょくおんほうそう、こっこには解せない言葉ばかりだ。〟〝たえがたきをーたえ、しのびがたきをーしのび〟さっきまで喜んでいた祖母が肩を震わせ泣いている。さらに繰り返される、たえがたきをー、しのびがたきをーが、鼠人間の妙に引き伸ばした言葉、さらには「ご尊顔」、「S /昭和」、「踏むという行為」と響き合う。こっこの恐怖体験に、まさかの「ぎょくおんほうそう」が重なっていくのだ。

 既成の価値観に縛られず、母のお腹に宿った弟/妹より、犬猫が欲しいと思うこっこは、奇怪な鼠人間体験を経て、ぽっさんという友の存在ゆえの寂しさを知り、初めて死を寂しいと思う。物語の話者は生まれてくるこっこの弟/妹に思いを馳せ、〝生まれたら、死ぬために、生きてゆく〟と言い切る。

 二学期、「しね」と紙に書いては小さく折り、机の中にいっぱいためていたクラスメートに、こっこはとびきり素敵なプレゼントを思いついた。それが何よりのこっこの成長の証だ。

 戦後70年、ヘイトスピーチの横行するこの国で、人と違うことはめっちゃ格好ええこっこの世界は、死をその体内に取り込んで、いちだんとシブく輝く。



この小説を映画化した『円卓 こっこひと夏のイマジン』も観た。

円卓 こっこ、ひと夏のイマジン [Blu-ray]

 

二回観て、また観たいと思っているのだから、きっと好きなのだな、私は。

主役の女の子はテレビのバラエティなどで見る限り(ドラマは観たことがありません)あざとくて嫌いなのだけど、この役に関してはま、いいんじゃないでしょうか。華もあるしね。ただ、うまいとは思わなかった。基本オーバーアクトで間も悪いし、肝心なせりふが聞き取りづらかったりする。でも、それは演出の問題とも言えるわけで、彼女のせいだけじゃないよな。

ぽっさんが絶品です。「この子が見つかったのは奇跡」と監督もインタビューで言っていたけど、ほとん普通で、ナチュラルボーンぽっさん。素晴らしい!

そしてもうひと方、鼠人間に扮した森山開次が絶品! この視覚化はもうこれ以上は望めないでしょう。ダンサーだけにくねくねも完璧です。ここだけでも見る価値あると思う。

「しね」と書いている幹成海役の子、担任ジビキの関ジャニ丸山君、平幹二朗の石太も印象的でした。

やっぱりカルピスが薄いのんは絶対アカンね。そのアカンさが体に染みついて、自分で作るとどうしても濃くなりすぎるのだなあ。