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タコカバウータン

えらそうなことを言っていても気が小さいです。褒められて伸びるタイプです。

SAVE THE CAT の逆襲

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SAVE THE CATの逆襲  書くことをあきらめないための脚本術

 

翻訳した本が出ましたー。

いつもながら、大きい本屋さんにしかないと思いますが、出会ったら、パラパラ眺めて「おお、これはおもしろい」とか一発、周囲に向けてつぶやいていただけるとありがたいです。

 訳者あとがき転載。たぶん叱られない。おらが書いただ。

 

 今明かされるブレイク・スナイター衝撃の過去! 読んでいただけましたでしょうか、あとがきです。まあ、衝撃の過去といっても要は「売れてなかった」ってことなんですけど。

 おや、困ってるね。わっ! なんてひどいアイデアだ! それじゃあ教室で途方に暮れるはずだ。それでも準備は整った……けどどこへ向かえばいいのやら。まずは背筋を伸ばして、リライト地獄に耐えたなら、《売れる》との接近遭遇もあったりするけれども、浮き沈みの激しい業界だから、逆襲大学でハウー・トゥー逆襲をしっかり身につけよう。実はここだけの話、私もねぇ……(以下実話)

 各章タイトルで本書のあらすじ(?)をたどってみましたが、さすが「逆襲」の本だけありまして、前提「負ける」なんですね。確かにすべて順風満帆、書けば売れるわ当たるわ儲かるわ、ウハウハな方、「私、負けませんから」な方がいたとして、第三弾はいりませんね。ノー・プロプレムなのだもの。シーリーズ二冊買ってます、しっかり読んでやってみました。なのにうまくいきません。そんなあなたに第三弾!ブレイク・スナイダーは最後まで、 Cat! ファミリーのあなたをお引き受けします!

 前二冊のさらに上を行く、超具体的なアイデアの練り上げ方、脚本の組み立て方から始まって、ついに脚本を完成させると、今度はそれを売り込んでいくための、エージェント、マネージャー、弁護士の見つけ方、活用法。脚本が売れるという、夢のような瞬間が訪れても、一転それは悪夢と化して、リライト地獄のなかでスタジオのご意向に沿うものを生み出せなければ、あっさりクビの冷酷無比。脚本に貼りつけられた注文メモの山。ときには一本の映画に何十人もの脚本家が投入されるハリウッド(悪)夢工場。それでも、立て! 立つんだ、ジョー! 地獄を抜けて、ついに映画完成! めでたく脚本家としてのクレジットをゲット!と思ったら、何もわかってないくせにエラそーな批評家に、こてんぱんに叩かれて……。

 実はけっこうネガティヴ・シンキングじゃないですか、ブレイクさん?

 いやいや、立て! 立つんだジョー! 逆襲劇場の始まりだぜ! なにしろ逆襲大学では、<こてんぱんに打ちのめされても地面から起き上がり、なんとか立ち上がって微笑んで、またかかっていこうとすることで評価が得られる。>のだから。

 そして、生身のブレイク登場。彼自身の逆襲物語が語られます。それは失意のうちの帰郷と父の死から始まります。<気づいていないかもしれないけれど、実は本書はずっと死について語っているのだ。>

 脚本術の本なのに!

 まるで自らの死を予見していたかのように、<死の香り>を漂わすブレイク。しかし、彼にとって「負け」も「死」も決してひたすらネガティヴなものではありません。「死」があるから「再生」がある。叩かれ倒れるたびに立ち上がり、いちだんと強くなる。不屈の男、ブレイク。生き返って、第四弾を書きそうです。

 私事ですが、実は本書の翻訳中に、私もいちばん身近な人を、いつも私が翻訳した本の、いちばん最初の一般読者になってくれた人を失いました。

 喪失の穴は暗く深く、底が見えません。それでもいつか光は射してくるのだと、ブレイク・スナイダーなら言うでしょう。

<ひとつ角を曲がれば、何かすごいことが、何か奇跡のようなことが待っている。>

 あなたにも、私にも、グッド・ラック!

 最後になりましたが担当編集者であるフィルムアート社の川崎昌平さんには、いつもにも増してお世話になり、いろいろお心遣いをいただきました。心より感謝いたします。

  二〇一五年 ひとり暮らしなんかな〜んも楽しくない晩秋に 

                             廣木明子