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タコカバウータン

えらそうなことを言っていても気が小さいです。褒められて伸びるタイプです。

コンビニ 人間

コンビニ人間

今回の塾の課題は芥川賞取りたてほやほやの『コンビニ人間』

提出したものは↓

 

鼓膜人間

  古倉恵子36歳独身コンビニアルバイト歴18年。村田沙耶香『コンビニ人間』の主人公にとっては、毎日がサバイバルだ。彼女は地球に落ちてきた異星人さながら、常に〝正常〟の鋳型に自分を押し込めないことには異物として排除されてしまう。とても聡明で、合理的な思考をするのだけれど、その合理性は世間には理解されない。幼い頃ビョーキ扱いされた苦い経験から、〝正しい店員のあり方〟が明確にマニュアル化されたコンビニでなんとか<世界の正常な部品>となった古倉だが、年齢とともに今度はいつまでも未婚でアルバイトであることが〝普通〟じゃないと、変化を強いられる。そこで彼女が選んだ策は、最低最悪の元同僚、白羽との同棲、というか、彼を飼うことだった。

 古倉は極端に無欲である。人間の三大欲求と言われる食欲、性欲、睡眠欲、すべてない。食事はコンビニ食品か、<食材に火を通して食べます。特に味は必要ないのですが、塩分が欲しくなると醤油をかけます。>という自炊!だし、自らそれを〝餌〟と呼んでいる。恋愛経験も性体験もなく白羽にも嫌悪感しかないが、白羽の弟の嫁に<私と白羽さんも、交尾をどんどんして、人類を繁栄させるのに協力したほうがいいと思いますか?>と身も蓋もない質問をして、腐った遺伝子、この世界に一欠けらも残すなと罵倒される。<どうやら私と白羽さんは交尾をしないほうが人類にとって合理的らしい。やったことのない性交をするのは不気味で気が進まなかったので少しほっとした。> 眠るのも仕事に支障がないように、ただそのためだ。  

 そんな古倉の唯一、〝肉感的〟な部分が鼓膜である。<コンビニエンスストアは、音で満ちている。>と物語は始まり、さまざまな音が紹介され、<「コンビニの音」になって、私の鼓膜にずっと触れている。>と官能的に滑りだす。<目を閉じて店を思い浮かべると、コンビニの音が鼓膜の内側に蘇ってきた。(略)自分の中に刻まれた、コンビニの奏でる、コンビニの作動する音の中を揺蕩たいながら>……コンビニの音はもはや、彼女を包み守る羊水だ。

 ところが、<コンビニ店員はみんな男でも女でもなく店員>のはずだったのに、白羽との同棲が知れるや店はその噂で持ち切りで、<店長の中で、私がコンビニ店員である以前に、人間のメスになって>しまい、<店の「音」には雑音が混じるようになった。>、<不愉快な不協和音だった。> ついに古倉は店をやめ、<私を満たしていたコンビニの音が、身体から消え>、羊水を失った胎児さながら、干からびていく。

 でも、大丈夫。日本の都会はコンビニに満ちている。彼女の耳はふさがれてはいない。おどおどと生き残りの道を探る異物から脱皮し、古倉は100% のコンビニ人間を目指すのだ。この道より我を生かす道なし この道を行く 実篤! ちょび社畜みたいですけど。

 

  課題に 決まる前に読んでいたのだけど、 これが選評もついててお得だよ 文藝春秋、しかも 電子版。 紙版とさして値段変わりません、ブーブー、うんとお安く作れるくせに、なのですが、場所とりませんから。しかし、電子書籍というのはボリューム感がわからないので、それについて書くときには、ものすごおく使いにくい。今回増してやぶ厚い雑誌の一部なので、何%とか表示出ても、何の役にも立たず。

 願わくば、読むときは紙書籍さながらがゔぁーちゃるりありてぃな感じでするりと出てきて、単語長押しで辞書機能が立ち上がるとかもちゃんとあって、表紙をパタンと閉じると、するするとパソコンやスマホの中に吸い込まれていく。そんな本を、頭のいい方、作ってくだせえ〜。