塾の今回のお題は日本語で書かれた絵本(翻訳も可)ということで
2011年に私が読んだ本ベスト1の『パトさん』を迷わず選んだ。
けど、書けない。バリへ持っていったけど、持っていっただけ。
大好きな本だけに、この空気感をどう伝えればいいのか、苦悶。
提出したものは↓
帯の最後の署名は「はなちょうちん パト」
ガンモ大二『パトさん』(羽鳥書店、2011年)は「ひるねをする。」で始まる。妙な遠近法のな〜んもない板張りの部屋に、ストライプの短パンの男性(パトさん)がうつ伏せに横たわっている。奥にいくら遠近法でも小さすぎる黄色いドアがあって、少し開いている。腕は折り畳んで胸のところ。板の間に直にうつ伏せ寝では鼻がつぶれてしまうよ。いえいえ、心配無用、パトさんに鼻はありません。口もない。目と眉だけだ。
その後、「たべる。」「のむ。」「かく。」「およぐ。」となんだか私の好きなことばかりしているパトさんの背後には、いつも例の少し開いた黄色いドア。
そのドアを抜けて「でかける。」そして「であう。」パトさん。黄色いのっぺらぼうのウサギの形のその人(?)は、首に水玉スカーフ。ドアはなくなって、ふたりで「たべる。」「のむ。」「かく。」「およぐ。」けんかと仲直りがあって、「ねる。」ベッドのシーツはストライプと水玉が混じっている。「ふえる。」ウサギの形にパトさんの眉と目の3人。みんなで「かく。」「およぐ。」子供たちは成長し……。
「心配する。」黄色ウサギは水玉シーツのベッドに横たわり、酸素吸入器のようなものにつながれている。「ありがとうといわれる。」ウサギは機械を口からはずし、パトさんはウサギの手を取っている。ここで私はいつも泣きそうになる。
「さよならをする。」水玉スカーフの結ばれた黄色い墓標。
「ふえる」子供たちそれぞれがまた異形のものと結ばれて、それぞれの特徴を合わせた子供が3人づつ。「たべる。のむ。」大勢でにぎやかだ。「みおくる。」
ひとりになったパトさんは「ねる。」「ゆめをみる。」最後のページは、水玉スカーフの墓標の隣に下半分がストライプの墓標。
行動だけを記す、発語のない、静謐な世界。直線を多用した、独特の絵。そこに波線が乱入し、水の質感が生々しい「およぐ。」
作者はきっと、水の中にいることが大好きな人だ。
繰り返し読む。どのページも淡々と、でも細々と楽しくて、ぶくぶくぶくと潜っていくことができる。
なにはともあれ『パトさん』いいですよ〜。読んでね。