タコカバウータン

えらそうなことを言っていても気が小さいです。褒められて伸びるタイプです。

阿武隈共和国独立宣言 村雲司

 

これは↓で紹介されていて読んだのだけれど

まさか読んで腹が立つとは。その勢いで書いてます。

原発で汚染された東北の村が日本からの独立を宣言。老人たちが目指したユートピアを国家は武力で一気に潰しにくる、という話なんだけれども、主人公の60代後半男性は大学時代の演劇仲間の女性に誘われて、この独立の企てに参加することになる。話は『この30年の小説、ぜんぶ……』でも言われているように、すんごくベタなんだけど、それは別にいい。問題はこの男が文字通り命がけの決断をするにあたって、妻にも息子にも一切打ち明けないこと。学生時代の女ともだち(既婚)とは瞬く間に同志となり、ともに散っていく〜みたいな、通奏低音、ほぼ不倫じゃん。一方、妻と息子には簡潔な手紙で事後報告。攻撃される阿武隈共和国を救おうとするデモ隊の中に、その妻子が都合よく駆けつけてきてくれている。来るか? 男が新宿駅西口で続けてきたスタンディングに絡めて様々なことが語られるけれど、妻は独立決行の日に家を出る夫を何も知らず見送り、最後のデモで再登場するのみ。この男はいったい長年連れ添ったであろう妻とどんな関係を築いてきたのか、何を語り合ってきたのか。あるいは成人に達している息子とは。そういうところを平気でスルーして、なんとも感じない、この正義のおっさんよ。嫁は空気か。空気がないと人間死ぬぞ。天下国家も大事だが、もっとキチンと自分の足元を見直せと、オヤジ臭く説教もしたくなる。原発も国家権力も吹っ飛んで、リベラル気取り正義オヤジ、その実ガチコンサバうぜえ、しか残らないってなあ。